トップページ > 小倉店 > 【サステナブルピープル】サステナブルを遠い存在と思わず「無理せずできることから」〜(株)小倉縞縞 代表取締役 渡部英子さん〜

小倉井筒屋ブログ Web担当者が見つけたお得な情報やイベント情報のほか、小倉店の魅力を再発見できる企画取材やレポートなどを発信します

公開日:2024.2.14

【サステナブルピープル】サステナブルを遠い存在と思わず「無理せずできることから」〜(株)小倉縞縞 代表取締役 渡部英子さん〜

サステナブルピープル Vol.2

井筒屋グループは、企業の社会的責任を果たすべく、事業活動を通じてさまざまな社会課題の解決に貢献し、人々の豊かな未来と持続可能な(サステナブル)社会の実現を目指してまいります。

新しく始まった本企画では、人と地域をつなぎ、豊かな未来を創造していくために、さまざまな業界のフロントランナーたちのお話を伺います。


株式会社 小倉縞縞
代表取締役 渡部 英子さん
Hideko Watanabe

北九州市出身。1996年、有限会社小倉クリエーション(現:株式会社小倉縞縞)を設立。2007年に新しい時代の小倉織ブランド「小倉 縞縞」を立ち上げる。「弟9回 福岡県産業デザイン賞」大賞受賞。2010年「グッドデザイン賞」受賞。2011年「経済産業省認定JAPANブランド」に小倉織が採択される。「2022年北九州SDGs未来都市アワード」で大賞受賞、「J R九州観光まちづくりAWARD 2023」の「ものづくり」部門で金賞を受賞。

第2回目は、一度途絶えた「小倉織」を機械織りの“ファブリック”として復元・再生させた株式会社小倉縞縞の渡部英子さん。今や地元が誇る特産品である「小倉織」を、洋服や雑貨、インテリアデザインなど、時代やニーズに合う形に進化させながら、その魅力を国内外に発信しています。そんな渡部さんは、サステナブル社会の実現にも積極的です。「小倉織」を通じた社会貢献活動についても、お話を伺いました。

・・・まずは「小倉織」を復元・再生させたきっかけを教えてください。

実の姉である染織家の築城則子が、1984年に失われていた「小倉織」を手織りで蘇らせたのが一番大きなきっかけです。姉は手織り作家ですから、当時も今も手織りで一点ものの帯などを作っていますが、みなさんが気軽に日常で使う形としての利用は難しい。私は当時、「布アネックス」という布の販売店を運営していましたが、復活した「小倉織」の伝統を継承しつつ、もっと多くの皆さんに「小倉織」を知ってもらうため、機械織りである小倉織のブランド「小倉 縞縞」を2007年にスタートさせました。


丈夫で地厚な小倉織は、経糸(たていと)の密度が緯糸(よこいと)の約2倍以上もあり、独特の縞模様が特長。1983年に骨董品店で一片の端切れと出合った築城さんが試行錯誤の末、小倉織を復元・再生。その後、渡部さんが機械織りとしての「小倉織」を誕生させ、現代の布としてさまざまな商品を作っています。現在は娘の弥央(みお)さんが代表を務める「小倉織物製造株式会社」で生地を製造。デザイン性に優れ、難易度の高い織物にも挑戦できる環境となっています。

・・・姉妹で「布」の世界に導かれたのですね。

そうですね。実は母が普段から着物を愛用する人でした。幼い頃から着物を見たり触れたりしていたので、二人とも布には興味があったのかもしれません。両親からは「好きなことを自由にやりなさい」と言われて育ったため、私は最初、音楽(ジャズピアニスト)の道に進みました。ジャズはアドリブやフィーリングが大切な音楽。これまでの人生でさまざまな出会いや縁があり、いろんなことを“直感”で決断してきましたが、これはもしかしたらジャズのおかげかもしれませんね(笑)。

・・・今年は小倉織が復活して40年です。

伝統ある「小倉織」の特長を継承し、現代人の感性に響くモダンなテキスタイルとして進化させてきました。おかげさまで国内はもとより、海外でも「KOKURA STRIPES」と呼ばれ、高評価をいただくまでに成長しています。これからも常に革新的なデザインを創り出し、北九州や日本の伝統産業の代表として、「小倉織」の魅力を広く発信していきたいと思います。

小倉織の丈夫で美しいたて縞という特長を生かした機械織りの布。グッドデザイン賞を受賞した「風呂敷」をはじめ、ネクタイ、洋服などの日用品やインテリアなど、用途は多分野へ拡大しています。


オリジナルブランドの商品は、直営店舗(本店・小倉井筒屋)にて購入できます。写真は小倉井筒屋 本館6階にある「小倉 縞縞 井筒屋店」

・・・続いて、サステナブルな取り組みについて伺います。まずは先日開催した「プロギングin北九州」について教えてください。

「プロギング」とは、ジョギングとゴミ拾いを掛け合わせたフィットネスのことです。弊社は回収した漂着ペットボトルなどを原料にした再生糸を使った生地「縞縞 EARTH」を制作しており、業種・業界を超えてクリーンアップ活動を行なっている「Green & Blue Challenge」という活動に参画しています。そこで、「プロギング」を実施している方たちとの出会いがあり、このフィットネスについて初めて知ることができました。

そして昨年、福岡市で開催された「プロギング」に参加したのですが、すごく楽しかったんです。ゴミ拾い=社会貢献であるとか、崇高なボランティアであるとか、そういう使命感を感じることもなく、ゴミを拾うという行為自体が純粋に楽しくて。老若男女が一緒に走り、ゴミを拾ったらハイタッチ。いろんな人とコミュニケーションを取りながら、街の魅力も知ることができて。こんな楽しいイベントなら北九州でも開催したい!と思い立ち、2024年1月21日に「プロギングin北九州2024」を開催しました。

実行委員長としてイベントを立ち上げ、開催までの道のりは大変でしたが、参加してくださった皆さんが笑顔だったのが心に残っています。第一回目は小倉での開催でしたが、今後は門司や若松など、市内各所でも開催できるといいなと思います。


今回は井筒屋をはじめ、いろいろな団体や企業が協力してくださったのですが、特に西南女学院大学の観光課の学生さんたちが、北九州の魅力を盛り込んだコース作りに協力してくれたことが、とても大きかったと感じています。北九州でSDGsに取り組んでいる企業も多数参加し、学生さんたちと新たな交流が生まれ、相乗効果は抜群でした。また、今回拾ったペットボトルは再生糸として利用しますので、こうしたイベントを通じて、皆さんに少しでも「循環」を感じてもらえると嬉しいです。

OCEAN BLUE(左)、FOREST GREEN(右)

社会に貢献できるものづくりを目指している「小倉 縞縞」。これは漂着ペットボトルなどを原料とした再生糸を取り入れた「縞縞 EARTH」シリーズの「OCEAN BLUE」と「FOREST GREEN」。小倉織の伝統的なたて縞と、深く繊細なグラデーションによって地球の美しさを表現しています。

・・・再生糸を使った「縞縞 EARTH」は、「2022年北九州SDGs未来都市アワード」で大賞を受賞しました。

名だたる大きな企業がエントリーされる中、私たちのような中小企業の取り組みにフォーカスしていただき、大変名誉あることだと思います。「縞縞 EARTH」は、小倉織の緯糸(よこいと)にクリーンアップ活動などで回収した海洋漂着ペットボトルや不用となった衣類を原料とした再生糸を使うという取り組みです。実は高い技術で、衣類から再生糸を作れる会社が北九州市内にあるんですよ。

ファッション業界はSDGsに対し、悪者扱いされていたところがあったので、少なからずこの業界に携わっている者として挑戦しました。生地の柄もSDGsを表していて、みなさんが何か環境を意識して行動する際の、フラッグになればいいなと思っています。

「SDGs Light」(左)、「SDGs Strong」(右)

SDGs 17のGOALを表したカラーがイメージ。緯糸に衣類を原料に再生されたポリエステル糸を使用。

・・・端切、端材を教育現場で活用した活動も「2022年北九州SDGs未来都市アワード」を受賞した対象活動ですね。

未来を担う子どもたちに伝統文化やサステナブルなものづくりを伝えるため、学校の授業に小倉織を取り入れていただく活動です。織物工場で出てしまう残糸や製品加工をする際の端切を、家庭科や図工・美術の授業で使えるキットにしました。ものを無駄にせず、循環させるという目的が前提としてありますが、やっぱり北九州に生まれたこと、育ったことに対してプライドを持ってほしいという願いもあって。こうした活動を通じて地域の伝統を知り、実際に触れたり使うことで、故郷に誇りを持てる大人に育ってほしいという思いも込めています。

去年スタートした取り組みで、実際に利用していただいた学校に感想を伺ったところ、子どもたちは作ったものを親や祖父母にプレゼントしたり、絵手紙に貼ったり。文化祭の時に作品を作るなど、用途は様々だったようです。やはり端切でも「小倉織」は良いものだと感じてもらえたようで、プレゼントとして誰かに贈ってくれたことは嬉しく思いました。

「縞縞 EARTH」が採用された、北九州市SDGs環境副読本の表紙。「小倉織がSDGsのフラッグになれたら」という渡部さんの願いが叶った出来事のひとつです。

・・・経年変化を楽しみながら、長く愛用されてきた美しくて丈夫な「小倉織」は、まさにサステナブルなものづくりを象徴する存在です。渡部さんは「サステナブル」について、どう感じていますか?

私が今、実際にサステナブルな生活を実践できているのかといえば、できていないと思うんです。でも、最近世界で起きている天災などを見ている限り、のんびりしていられないなと思うし、この意識は誰しも持っているのではないでしょうか。だから「サステナブル」を遠い存在と思わず、日々の生活の中で些細なことから心がけて、ちょっとずつ実践していけばいいのかな。「無理をせず、できることから」という意識が大切だと感じています。


←【サステナブルピープル】
サステナブルな暮らしの先は「面白くて無理なく楽に続く」ものであればいい
〜西日本工業大学 石垣充教授〜

カテゴリー:,

フロア:

Category

Floor

Search

Monthly Archive

Recent Entries