作り手の思いや、商品へのこだわりをご紹介!
Vol.3
孫次凧(まごじだこ)
独自のデザインと鮮やかな色彩が
大空や室内で個性を放つ、
郷土で愛される手作り凧
ユニークな形、表情が愛らしい特産工芸品
北九州市戸畑区にアトリエ兼工房を構える『孫次凧』。大きな目と鮮やかな色合いが印象的なセミ凧をはじめ、うちかけ凧、カッパ凧、ひょうたん凧など種類も豊富です。地域の郷土品として愛されており、福岡県の特産工芸品にも指定されています。
今回は『孫次凧』の歴史や制作工程を伺いながら、父と娘、二人三脚で凧つくりに取り組む、それぞれの思いについても語っていただきました。
よく飛ぶと評判だった、祖父オリジナルの凧
孫次凧の誕生は、明治の末期。冬の季節風が強く、昔から凧揚げが盛んな北九州市で、竹内孫次さんが自身の遊び道具として作り始めたことから始まりました。「昔、祖父と一緒に凧揚げをしていましたが、よく飛びましたよ」と懐かしそうに語ってくれたのは、現在、祖父の意思を受け継ぎ、2代目として孫次凧の制作を行っている竹内義博さん。実は凧作りを直接、祖父から教えてもらったことはないそうですが、幼い頃にそばで見ていた記憶を手繰り寄せ、26歳の時、祖父の名前から名付けた『孫次凧』を独学で復活させました。
写真中央が祖父の孫次さん。セミや河童など、生き物をモチーフにした斬新なデザインはもちろん、何より「よく飛ぶ」ことが評判だったそうです。
凧の基本をいちから組み上げる、父・義博さんの仕事
孫次凧の製作工程を簡単にご紹介します。屋台骨となる竹は、『女竹(めだけ)』と『真竹(まだけ)』の2種類を使用しています。「竹は切ってすぐは水分が多いから、半年から1年くらい乾かします。ちょうどよい渇き具合になったら、1~8mm程度の細いひご状に削っていくんです」。芯がしっかりしている真竹で凧の基礎を組み、柔らかくてよくしなる女竹を操りながら、目分量で複雑な形に仕上げていく竹内さん。職人ならではの技が光ります。
いろんな形、大きさに対応できるよう、アトリエの作業場にはさまざまな形状の竹ひごを作ってストック。「昔は七夕飾りに使った竹も、使っていたようですよ」。
悩むことなく手を動かす竹内さん。複雑な形状の凧をひとつ組み立てるのに約20分を要します。「左右対称に組むこと、そしてバランスがとれる中心点を決めるのが重要なんです」。
凧の個性豊かな表情を描いていく、娘・梓さんの仕事
デザインの肝となる絵付けは、娘の梓さんが担当しています。「私が絵付けを引き継ぐ前は、母が40年近くやっていたと思います。母の仕事ぶりをそばで見ていた時は、簡単に書いているな~と思っていたんですけどね。実際はそんなに簡単ではありませんでした」。
梓さんもまた、母の仕事ぶりを間近で見ていた頃の記憶を手繰り寄せ、試行錯誤しながら母の技術を自分のものにしていったのです。
乾き具合や使う色によって作業を進めるので、梓さんの周りは絵付けを待つ凧だらけ。「最初は椅子に座ってテーブルで絵付けをしてみたんですが、凧を広げて置くので、結局は母と同じ正座スタイルに落ち着きました」。
多彩な色使いが目を引く『孫次凧』。薄い色から濃い色へ、順番に重ねて塗っていきます。「雨が降っている日は乾きにくいので、にじまないように細心の注意を払います」。
彩色に使う材料にもこだわっています。「凧は子どもたちも遊びますから、安心して楽しく遊べるように、絵付けには食紅を使います」と梓さん。初代が使っていたのは泥絵の具だったそうですが、食紅に変えた結果、より和紙に映える色合いになったそうです。
凧のデザインは約30種類。「昔からの郷土玩具にインスピレーションをうけ、父と母がいろんな種類の凧を作り上げました。現在は年に1つのペースですが、私と父で相談しながら、干支のデザインを増やしています」。
二人三脚で歩み続ける、親子それぞれの想い
アトリエでは父と娘が、手を休めることなく分業で作業を進め、1日に6~7枚のペースで凧を制作しています。親子という関係であるがゆえに、普段はあまり言葉を交わさなくても通じる部分があると思いますが、せっかくの機会。あえてお互いのことをどう思っているのか、尋ねてみました。
娘の梓さんに、お父さんのことを尋ねると「すごいの一言です。1つのことをずっとやり続けることは、とても難しいことなんだ、ということ実感しています」。そういう梓さんも、絵付けをやり続けて今年で8年目。今や竹内さんの右腕として、なくてはならない存在です。
「妻が亡くなってから、絵付けを誰にしてもらうかと考えたとき、やはり家族に手伝ってもらいたいと思いました。その時、娘は下の子がまだ1歳半で、子育てに忙しいときでしたが、引き受けてくれて…本当に感謝しています」。一日でも長く凧を作りたいと願っていた竹内さんの想いは、ちゃんと梓さんに届いていました。
お互いに敬い、信頼し合いながら二人三脚で作られる『孫次凧』。どこか温かみを感じるのは、丁寧に一つひとつ手作りされているということに加えて、二人の優しい人柄がにじみ出ているのかもしれません。
凧は昔から縁起物として愛されており、現在は正月飾りやインテリア、お土産として購入する人も多いようですが、やはり凧は飛ばすことに醍醐味があります。「実際に作った凧は、やっぱり外で飛ばしてみるんですよ」と子どものように嬉々として話す竹内さん。
50年近く『孫次凧』と向き合う日々の中で、製作の原動力になっているのは、祖父と一緒に飛ばし、胸を熱くした凧揚げの楽しい思い出なのです。
きたきゅうコロンブスが「孫次凧」を取り扱うことになった理由
きたきゅうコロンブスは、『文化を伝えることは、またそこから新しい文化を生み出すことにつながる』という考えから、北九州に根付く文化を発信したいと考えています。 「実は子どもの頃から、実家に『孫次凧』が飾ってあったので自分は知っていましたが、意外と『孫次凧』のことを知らない人も多いのだと思います。地域の誇りや文化を後世に伝えることは、そこからまた新しい文化を生み出すことにつながるのではないか。そこで今回は、一人でも多くの子どもたちが地元の文化に触れ、地域を愛するきっかけになればと思い、2019年10月31日から「孫次凧」を取り扱うことになりました」と担当バイヤーは話します。
きたきゅうコロンブスの店頭には干支をモチーフにした凧や定番の『孫次凧』などの凧だけでなく、栞やポストカードなども並ぶ予定です。
ユニークな形に、目を引く鮮やかな色彩。玩具としても、装飾品としても楽しめる『孫次凧』。これからも愛嬌たっぷりの表情で、北九州の魅力を伝えていくことでしょう。
孫次凧 二代目作者
竹内義博さん
会社勤めのかたわら、26歳のときに孫次凧の制作を開始。やがて「本気で凧作りに取り組みたい」という思いが高まり、53歳の時に会社を退社。以後、凧制作に専念。現在は娘の梓さんとの共同作業で『孫次凧』を作りながら、ワークショップなどを行い、子どもたちに凧揚げの楽しさなども伝えている。
今回ご紹介した商品はきたきゅうコロンブスにてお取り扱い中
[孫次凧(まごじだこ)]扇(ミニ)
[孫次凧(まごじだこ)]扇(ミニ)
- サイズ:約25×17cm
1,430円(本体価格 1,300円)
[孫次凧(まごじだこ)]扇(小)
[孫次凧(まごじだこ)]扇(小)
- サイズ:約48×34cm
2,750円(本体価格 2,500円)
[孫次凧(まごじだこ)]ひょうたん(ミニ、小、中、大と各サイズあり)。
[孫次凧(まごじだこ)]ひょうたん(ミニ、小、中、大と各サイズあり)
[孫次凧(まごじだこ)]セミ(ミニ、小、中、大と各サイズあり)。
[孫次凧(まごじだこ)]セミ(ミニ、小、中、大と各サイズあり)
[孫次凧(まごじだこ)]顔ねずみ(ミニ、小、中、大と各サイズあり)。
[孫次凧(まごじだこ)]顔ねずみ(ミニ、小、中、大と各サイズあり)
【サイズと金額】
ミニ(約25×17cm)1,430円
小(約48×34cm)2,750円
中(約65×45cm)4,400円
大(約96×66cm)6,600円