作り手の思いや、商品へのこだわりをご紹介!
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Vol.2
Tsumugi+
(つむぎぷらす)
丁寧に作られた、世界で1つの作品に
こだわりと想いを編み込んだ
豆靴とアクセサリー
たった全長2.5センチの、
可愛らしい小さな靴
洞海湾を一望できる気持ちの良いアトリエで、糸を使ったアクセサリーなどをかぎ編みで制作している作家のTsumugiさん。中でも看板商品である「豆靴」は、小さいながらも靴の底には本革を使用したり、インソールを敷いたりと、そのクオリティーの高さに驚かされます。今回は彼女の作家としての歩み、作品に対する思いなどを伺ってきました。
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好きを仕事に。大きな決断を経て歩み始めた作家への道
「もともと編み物は苦手だったし、下手でした」と笑うTsumugiさん。お祖母様やお母様は手芸が得意で、手作りのセーターなどを編んでいたそうですが、Tsumugiさんは何度挑戦してもうまくいかず、ちょっと試してみては諦めることの繰り返しだったそうです。
そんな中、転機は突然訪れます。26歳くらいの頃、お母様から「かぎ編み針セット」を譲り受けたTsumugiさん。「これでダメだったら手芸は諦めよう」…大袈裟に言うなら「背水の陣」で挑戦したところ、初めて1つの作品を編み上げることに成功しました。「今までは太い糸ばかりを使っていたんですが、細いレース糸を使ったことが私には良かったみたいです。とても嬉しくて、もっと複雑な模様を作りたいと手芸に没頭する日々が始まりました」
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初めて完成させたのは、ドイリーと呼ばれる花瓶の下などに敷くもの(写真)
「初めて作ったものは、とてもお見せできません」と笑います。
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役所勤めをしながらイベントに出店したり、雑貨店に委託販売してもらったり。徐々に活動の幅を広げていく中、現在アトリエを構えている“海の見える部屋"に入居できるというチャンスが到来します。そこで安定した仕事をすぐに辞め、作家として生きることを決意。大きな決断だったと想像しますが、Tsumugiさんにはあまり迷いはなかった様子。制作活動をしていく中で、お客様が作品を喜んでくれる姿を糧にしながら、心はすでに決まっていたのかもしれません。
素材にこだわり、オリジナリティーを追求した作品作りで着実にファンを増やしながら、「Tsumugi+」の制作活動は7年目を迎えています。
水彩のような色使いで、
多彩に糸を操る
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「Tsumugi+」の作品には「センスの光る色使い」という特徴があります。アトリエを訪れたときに目に飛び込んでくるのは、ディスプレイされた色とりどりのたくさんの糸。写真は、京都にある糸の専門店〈AVRIL〉のもの。
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こちらは1908年創業の老舗〈オリムパス〉のレース糸。とってもカラフルで、見ているだけで楽しくなります。
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そのほか、大阪在住の手染め職人による「手染め糸」や、フランス〈DMC〉のレース糸なども使用。さまざまな糸の色を絵の具のように混ぜて、作品のイメージを膨らませていきます。
「色使いに関しても特別な勉強はしていませんが、高校時代は美術部に所属していました。
そういえば、祖父は水彩画を描いていたし、私は小さい頃から塗り絵も好きでした。今思えば、そういうことに興味関心があったのかもしれません」
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小さくて可憐な「豆靴」ができるまで
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豆靴が完成するまでには、約2日間ほどかかります。「編む作業には、そんなに時間はかかりませんが、凝固剤で固めたり、つま先にコルクを入れたりして強度をアップさせる時間も必要なんです」それはすべて、購入してくれたお客様に長く愛用してもらうためのひと工夫です。
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革の専門店に頼み、薄くそいだ本革を靴底に使用しているのもポイントのひとつ。驚くことに本物の靴同様、接着剤ではなくしっかりと糸で縫い付けられています。「本物の靴はどうやって作られているのかなと思い立ち、解体してみたら縫い穴がありまして。かぎ針を入れたら入ったんです。ここからヒントを得て、かぎ編みで豆靴を作ってみようと思いました」
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棚にストックされた、大量の布は中敷き用。豆靴は小さいので、大きな柄だと無地のようになってしまいます。そこで、細かい柄の布を見つけてはコツコツ収集しているそうです。
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アトリエの作業机を撮影させてもらいました。小さなパーツやハサミ、ピンセット、作りかけの作品…ここから心弾む作品たちが誕生していきます。
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手際よくかぎ針を動かして編み上げていくTsumugiさん。お祖母様やお母様のDNAが受け継がれていることを感じさせる光景です。「ちょっと遠回りしましたけど、私本当に手仕事が好きなんです」
日常になじむアクセサリーと、
センスの光るオーダーメイド
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「豆靴」は1足から単品で販売されるほか、ストラップやイヤリングになったり、さまざま形でお客様の手元に旅立ちます。
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額に入ったイラストやメッセージはTsumugiさん本人が描いているので、オーダーが可能。出産祝い、誕生日、還暦のお祝いなど、人生の 節目に渡すプレゼントとして、とても喜ばれているそうです。
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「豆靴」以外にも、糸を使った素敵なアクセサリーがあります。写真は手染め糸を使ったブローチ(2,300~2,500円)。
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小さな樹脂リングを編み上げて繋ぐ「くるくる」シリーズ(2,300~3,000円)。色が変化していくグラデーションの糸を使用することで、人肌の濃淡にマッチして、肌なじみが良くなる効果も。「この編み方を作り上げるのに1年以上かかりました」とTsumugiさん。
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土星をイメージして作られたシリーズ。輪っかの中のパールを、動かないように固定させているのがポイント。ミントグリーンの天然石も爽やかです。
ピアス(2,500円)
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日常にそっと寄り添ってくれるような風合いを醸すアクセサリーは、上質さの中にきらっと光る個性も垣間見え、大人の「可愛い」をくすぐります。
「10年、20年後も気に入ってつけてもらえるような。そして「Tsumugi+」のアクセサリーが好きだと言ってもらえるような。そんな愛される作品を作り続けたいです」と、作家としての決意を語ってくれたTsumugiさん。
彼女の作品は現在、井筒屋本館6階「きたきゅうコロンブス」にて展示販売されています(2019年8月末まで)。店頭には新作や定番、夏の作品など100点が並んでいます。
なお、7月31日(水)から1週間はTsumugiさんが来店し、店頭での実演販売を予定しています。
繊細で可憐、小さいからこそ感じられる手作りの凄み。Tsumugiさんの優しさとこだわりがつまった、愛おしい作品たちに、ぜひ会いに来てください。
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「Tsumugi+」
作家 Tsumugiさん
公務員として働きながら、趣味としての手芸を楽しんでいたが、アトリエを持つ機会に恵まれたことから、作家として生きていくことを選択。2013年4月に「Tsumugi+」をオープン。店名には「作家仲間たちと繋がって成長しながら、お客様と繋がりたい」という想いを込めた。